過去に生きている

この前、大昔に縁があった人をSNSで見かけた。彼女は私から当時の恋人を奪っていった女性で、そもそもそれ以前からどうにも相容れなくて、でもなんとなく近寄らずにはいられない、とても奇妙な関係だった。私は彼女が羨ましくて仕方がなくて、そしてまた、負けたくなかった。彼女の何に勝ちたいのかはわからなかったけれど、自分が手を汚さないぎりぎりの範囲まで近寄って、いつも彼女をじっと観察していた。彼女も彼女で、そうやってじっと射程範囲ぎりぎりの線を踏み越えてこようとしない私に苛立ち、でも興味をそそられていたのだろうとは思う。
だから、彼女が彼の隣に立つようになった時点で、私と彼女の間には、彼に選ばれた者と選ばれなかった者としての明確な優劣の関係が出来上がった。そんな思春期の苦々しい思い出がよみがえって、腹の中がすっと冷えていくのがわかった。

 

でも、いつの日かぶりの彼女は、あの頃とは違って、とてもきらきらして見えた。
あの頃とは違う笑顔で、しあわせそうにしていた。

 

なんだ、と拍子抜けして、それから、ばかばかしくなってしまった。
いつまでも勝ち負けに拘って臨戦態勢を取っていたのは自分だけで、彼女はとっくにもう、私なんか追いつけない場所まで高く舞っていた。
勝手に他人と自分を比べて、自分が劣っていると思いたくなくて、変な感情にしがみついて、結果的に私は少しも成長しないまま歩いてきてしまった、ただそれだけだったのだ。

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別に劣っていたっていいし、負けたっていい。
選ばれなくたっていいし、愛されなくてもいい。
そんなことで自分の価値が下がるわけじゃないんだ。

 

そう思ったら、彼女のことはすっかり気にならなくなった。
もちろん、そこに辿り着くまでに何度も波が押し寄せて、空しくて悲しくて、そして当時の別れを思い出して、少し泣いたけど。
彼女は私を解放するために、もう一度私の前に現れたのかも知れない。

だとしたら、悔しいけど、ありがとう。