Camellia II (temporary)

人と人が出会うのには、必ず、何かしらの意味があるのだと思う。

薄く窓を開けて、早朝の青白い空気がようやく少し和らいできたのを指先で確かめる。出てきた時にはまだ空は暗くて、幹線道路の橙灯が流れていくのが少し眩しかった。薄明を過ぎた今は、朝陽が当たるおかげで車内も暖かい。
「で、会ってみてどうだったの?」
「きれいなひとでした」
少し考えてそう答えると、相手はハンドルを回しながらくつくつと笑った。彼女と会っていたことは、昨日、進行形で伝えていた。そもそも彼女を知ったのも、この人がきっかけだ。顔が広くて、いつも何か面白いものを見つけてくるこの人を、彼女は県立図書館のイベントで知り合ったのだと嬉しそうに話してくれた。硝子のように透き通る声だった。
後部座席に置いた荷物の中に、別れ際に彼女から貰った手土産があるのを思い出す。
「手作りのお菓子をいただきました」
「なるほど、食べよう」
「はい、みんなで」

黒緑の髪を肩下で揺らしながら少し得意そうにはにかんだ彼女の愛らしさを思い出して、笑みがこぼれる。f:id:riechr:20160903233438j:plain