忘却

見知らぬ人を殺してしまう夢を見て飛び起きた。どうやら寝る前に癖でつけてしまった暖房が暑かったらしい。
エアコンを止めて、再びまどろみの中にもぐりこむ。目を閉じて、ふわふわとした感覚にたゆたううちに、急に「記憶と記憶のインデックスが紐付いていない」と思った。このところ、次から次へすぐ忘れていく。昨日起こった出来事も、何を食べたのかも、「昨日」という単位では思い出せない。例えば料理を見て、「あ、これは昨夜も食べた」とか、事象や物事単位では覚えているのだけど、何かトリガーがないと思い出せない。
その「いつ」に紐付かないのはなぜなのか。その理由がきっと、「いつ」というインデックスを作っていないから、なのだ。だから、事象そのものは覚えていても、それが「いつ」のことなのかは思い出せない。
なるほど、とひとり納得した。
でもそれだって、事象そのものの方を忘れていないなんて言い切れない。現に、何か大事な物がじわじわと侵食されている気がするのだ。毎日何かを詰め込みすぎているのか、或いは本気で病気にでも罹っているのか。こんなことを思ったことすら、きっと朝目覚めた時にはうっすらとしか残っていない。「人は悲しいぐらい忘れていく生きもの」とミスチルも歌っていた。昔教わった先生も「記憶より記録」と言っていた。だから、こうして記録して、「いつ」も「なに」も忘れないように刻み込むのだ。
これでこの、深夜の思考内容は忘れない。ブログに書いたことは忘れるかも知れないけど。